『幼き日、夜ごと父の手枕で聞きし、その郷里矢戸、いまわが目の前に在り』松本清張 中国山地の山間・日南町矢戸にひっそりと、しかし厳かに『松本清張文学碑』が佇んでいました。秋になると、何故か日野路に出かけたくなります。そんな時に、出会うのがこんな懐かしい世界・・・。 日南町矢戸は社会派文学の巨匠、松本清張さんの父峯太郎が終生なつかしみ、慕ってやまなかったその生まれ故郷。碑に刻まれた言葉には、故郷を慕い続けた父の切々たる思いと、父のかわりにこの村を見て帰りたい、帰りたいという巨匠の願いが込められています。 松本清張氏の代表作のひとつが『砂の器』 今週号の週刊アエラ(NO49)で特集記事(タイトル戦後60年、砂の器の原作の舞台を歩く)になっていますが、45年前に書かれて以来、延べ600万部に迫る大ベストセラーになっているとのこと。この小説のクライマックスの舞台「亀嵩」は、山向こうの村ですが、ここを小説の舞台に選んだ背景には、ここ故郷・矢戸の存在がありそうですね。この文学碑の前に立ち、周囲の山村風景を見ると、あらためて…そんなふうに感じます。(I) |