中海沿岸からの大山夕焼けショット。冠雪が紅かった。 冬のこの時季、麓からみる大山は神々しいまでに輝くことがあります。中でも、大山の頂上からすそ野まで一望できる中海や、美保湾越しの風景に多くの作家達(志賀直哉、司馬遼太郎など)は魅せられ、さまざまに表現してきました。 その中から、その雰囲気をつたえた秀逸の表現をご紹介します。(美保関が舞台です)
「杉村さん、凄いよ、山だ」 山岸が叫ぶように伝った。杉村ははね起きた。海の青さを踏まえて、大天橋の向こうに真白な大山が鋭く立っていた。鋭角的な肩は雪の鎧を着ているようだった。 「あれが大山なんだ」杉村は山岸というより、自分に向かって叫んでいた。(島村利正氏の「霧の中の声」新潮社刊より)(I) |