秋の陽ざしを浴びて、時には銀色に、時には金色に輝く穂波。美しかった。 ススキの草原にすっぽり身を置くと、風が草木の香りを運んできます。 足もとにはアザミ、女郎花、吾亦紅。穂波の遠くには、色付きだした大山が柔らかな稜線を描いていました。 ススキの「すす」は「すくすく」生い立つ意で、「き」は草の意ということです。別名で花穂が獣の尾に似ていることから「尾花(おばな)」とも呼ばれています。また、茅(かや)とも言われ、今はあまり見ることはありませんが、茅葺き屋根は、この薄(ススキ)などの茎や葉を用いて葺(ふ)いた屋根のことです。 万葉の時代からススキは美しい草と思われていたらしく、こんなふうに詠われています 「秋の野の 美草(みくさ)刈りふき 宿れりし 宇治の京(みやこ)の 仮いおし思ほゆ」 (美草=薄) (額田王、万葉集) (I) |